さくらインターネット(3778)-2026年3月期2Q決算分析
1. 概要
✨ 売上高は156.3億円(前年比 +17.8%)で2Qとして過去最高、営業損益は▲9.2億円、経常損益▲8.1億円、四半期純損益▲6.3億円。GPU/官公庁案件の伸長と前倒しの人員・減価償却増で一時的にコスト先行。
💡 けん引要因は「GPUインフラストラクチャーサービス」売上+25.9%(上期28.2億円)、官公庁大口の「その他サービス」+44.8%、クラウドサービス+10.2%。
📈 ARRは146.8億円(+10.5%)とストック収益が着実に積み上がり、SaaS/クラウドの基礎体力は強化。
🧊 キャッシュ・フローは投資CF▲224.9億円、FCF▲224.3億円(GPU機材支払いの増加)。現金残高は107.8億円。
🧑💻 人員は前期末比+119名の1,116名へ(採用を前倒し)。
2. 通期見通しと配当
📊 通期予想据え置き:売上高365億円、営業利益3.5億円、経常利益4.0億円、当期純利益2.0億円。2Q累計は売上で計画線内、損益は計画比で上振れ着地と説明。
💵 配当方針は成長投資と還元の両立、年間5円予想を継続。
3. 事業ドライバーの現況
🚀 GPU×高付加価値化:8–10月にかけて「高火力 PHY B200」「さくらONE(H200/B200)」「さくらのAI Engine」を順次投入し、学習(大規模クラスター)と推論(従量・即応)を両面でカバー。収益性の高いクラウド型へ軸足を移し、1台当たり稼働効率とLTVの最大化を狙う。
🏗️ クラウドの地固め:石狩第3ゾーン稼働で大規模需要の受け皿を拡張、ガバメントクラウド正式認定(2026年3月末)に向け開発は順調。顧客伴走とプレミアムサポートでアップセル/クロスセルを狙う。
🤝 販売エコシステム:再販パートナー制度の立上げと日本GPUアライアンス(KDDI/ハイレゾ/同社)で相互再販を開始し、国内のGPU安定供給と大型案件アクセスを強化。
4. 投資・財務の見取り図
💽 投資計画:26/3期の投資予算は401億円(うち生成AI向け設備228億円、データセンター107億円)。2Q累計実績は150億円(生成AI向け57億円、コンテナ型DC34億円)。
🧊 資産/負債:固定資産は機材計上で増加、流動資産は機材支払いで減少。自己資本比率は3割強を維持しつつ、リース債務・借入金が増加。
🔌 電力・原価:減価償却・リース・電力・販売原価等の増加が利益を圧迫。冷却効率に優れたDLC採用のコンテナ型DCと再エネ活用で運用最適化を進める。
5. 投資家視点の評価(短中期)
🔭 ポジティブ:ARR基調は堅調、ガバクラ認定取得に向けた進捗、B200や自社スパコンさくらONE(TOP500世界49位)投入で技術・認知のレバレッジが期待。販売エコシステム強化で需要捕捉力も改善。
🧩 懸念:上期は営業赤字・FCF大幅マイナスと投資先行の色が濃い。電力・償却・人件費の固定費化により、稼働率・単価・ミックスの改善が計画どおり進むかが損益分岐の肝。大型案件の期ズレ(官公庁)もボラティリティ要因。
🧮 注目KPI/イベント:①GPU稼働率/推論売上の逓増(AI Engine・VRTの伸長率)、②ガバクラ正式認定の取得可否と公共比率、③日本GPUアライアンスによる受注創出、④石狩第3ゾーンの大口吸収力、⑤EBITDAと営業CFの反転時期。
6. 総合評価
📊 総合評価: やや厳しい
✅ 売上とARRは成長軌道、通期計画も据え置きでトップラインの視界は良好。一方で、減価償却・人員増・電力費の重さで上期は赤字・FCF大幅流出、投資回収の工程管理が最重要。B200/さくらONE/AI Engineの高付加価値モデルが推論の逓増につながれば収益改善のレバーは明確。ガバクラ認定と公共案件の積み上げがマルチプルの支えとなるかを見極めたい。
→ さくらインターネット(3778)は、GPU×国産クラウドの独自ポジションで攻勢。投資先行による短期赤字を許容できる投資家には、推論比率上昇と公共ドライブのトリガー確認がエントリーポイント。稼働率×単価×ミックス改善が結び付く四半期の転換点に注目。
投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。