川崎汽船(9107)-2026年3月期2Q決算

1. 概要(2025/4–9 上期)

売上高5,005億円営業利益429億円経常利益596億円親会社中間純利益686億円。為替は期中平均146.18円/$で円高方向、燃料価格$547/MT。前年はONEの高採算と外部要因の追い風が大きく、今期は持分法(ONE)減少自営の費用増/為替が重石。
🚗 製品物流(自動車船)は世界的な需要底堅さで台数は微増も、運航費用増為替の逆風で減益。関税の直接影響は限定的
ドライバルクは大型・中小型とも市況は堅調域を維持しつつも、前年の高水準からは反落し減益。
🛢️ エネルギー資源LNG/LPG/原油/電力炭など中長期契約が安定収益を確保。前期の一過性損失剥落もあり増益
📦 コンテナ船(ONE)駆け込み需要で数量は前年並だが、新造船竣工等で運賃低下持分法益が大幅減し、連結経常を圧迫。

2. 通期見通し・資本政策

📈 通期計画売上9,840億円営業利益860億円経常利益1,000億円当期純利益1,050億円下期為替前提145円/$、スエズは喜望峰迂回継続を前提8月公表比で経常▲200億円・当期▲100億円(主因:ONE)。
💸 株主還元年間配当120円(中間/期末 各60円)を維持。中計期間の還元総額8,000億円以上を据え置き、500億円超の機動的な追加還元を事業環境を見極めつつ検討継続PBR1.0倍以上の復帰・維持を掲げ、営業CF1.5兆円投資CF6,100億円の枠内で資本効率×財務健全性を両立。

3. セクター別の着眼点(投資家視点)

🚗 自動車船: 米関税の影響は限定的世界的な底堅い需要に支えられ輸送台数は前期比微増想定。ただし運航費/為替で採算はやや低下。環境対応船の拡充で競争力を強化。
ドライバルク: 荷動き回復で市況は概ね堅調ながら、前年超の水準には非ず契約の中長期化航路最適化で収益のブレを低減。
🛢️ エネルギー資源: LNG/LPG/原油/電力炭中長期契約でブレが小さく、船隊拡充(LNG65隻体制へ)で安定CFを積上げ。液化CO₂輸送/洋上風力支援など低/脱炭素の新領域が将来の非連続成長の芽。
📦 コンテナ(ONE): 不透明な運賃環境が続く前提。機動的配船×オペ効率化で収益確保を図るが、持分法の変動は当面のボラ要因。

4. 事業環境・リスク

🌍 地政学/物流: スエズ運河の復帰時期不透明、紅海情勢/ホルムズの不安定化リスク。喜望峰迂回船腹需給をタイト化させうる一方、復帰時は高齢船の解撤増も。
🛃 通商/関税: 米国関税・対抗措置の動向次第で費用/ルートに影響。中国関連船の入港料問題一部延期/見直しの報もあり、注視継続。
💱 為替/燃料: 1円で経常±10億円(下期感応度、ONE含む)。燃料10ドルで経常±0.1億円と影響は限定的だが、運航費・人件費の上振れに留意。

5. 総合評価

📊 総合評価: 中立
エネルギー資源の安定収益自営の足腰ボトム耐性は維持。資本政策の一貫性(年120円配当+追加還元検討)は投資家フレンドリー。
🚨 一方で、ONEの持分法減少と自動車船の費用増/為替
今期の上値
を抑制。迂回航路/通商の不確実性が当面のバリュエーション上限要因。安定CF×低/脱炭素案件の積み上げと追加還元の実行が評価改善のトリガー。

→ 川崎汽船(9107)は、安定性の高いエネルギー資源と脱炭素領域でCFを稼ぎつつ、コンテナ・自動車船の外部要因をいなす局面。配当一貫性に加え、機動的な自己株等の“追加還元の実行”が再評価の鍵となる。

投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。